2010年03月04日

テレビ番組批評「お買いもの」

 テレビ番組批評「お買いもの」 NHK 2009年2月14日 21:00 隅井孝雄
 No. 31 5/6/09

 これは「Galac]2009年5月号(放送批評懇談会)ギャラクシー賞テレビ部門月間賞の作品評として掲載された。

 銀座のカメラ店の店主と店員の会話が年寄りの旅の結末を暗示、絶妙なプロローグである。芝居ならこれがいわば幕前で、カーテンが上がると田舎の茶の間の老夫婦。久米明と、渡辺美佐子が演じる夫婦の会話が絶妙だ。特に久米の老人特有の言葉使いがリアルに響く。シンプルなカメラワークが会津の田舎の風景をきわめて現実的なものとして描き出してくれる。そして効果的に挿入されるチェロとピアノのこれもシンプルな音楽が久米明の足取りをゆったり伝える。
 カメラ屋のDMが老人の心を揺さぶった。かくして赤いジャンパー姿の久米は渡辺を伴っていざ渋谷へ。だんだんしっかりしていく久米の変化がセリフまわしにうまく出ている。電車のなかでの切符騒動、初めて見るケータイ改札、スタバでのコーヒー選び、孫のアパートでのラザニアなど、一つ一つのエピソードがそれなりにディーテイルを伴って現代社会の断面になっているようだ。
 矯めつ眇めつ、迷いに迷って手にしたカメラを持って再び渋谷の街へ。迎えにきた孫娘とその彼氏との会話も、もまた極めて自然体で進行する。
 時代遅れだがかつては高級だったフィルムカメラと、人生の思い出の波長がうまくシンクロしている。幕切れの縁側のシーンが全体の流れから見ると説明的だったのが気にかかる。
 最近ゆったり進行するドラマ、セリフ、映像を丁寧に積み重ねるドラマが増えたような気がする。テレビのごく初期に舞台劇の延長のような読み切りドラマが繁栄したが、50年、60年のサイクルでそれがまた戻ってくる気配がある。NHKがその先鞭をつけているようだが、民放でも地方局の周年ドラマなどに時折その手の作品を見かける。
 脚本の前田司郎は初めて聞く名だが筆は確かだ。聞けば演劇の経験が豊富で岸田国士賞も得ているという。彼のような新鮮な才能を持つ練達の脚本家がテレビの世界で活躍してくれることは嬉しい。中島由貴の演出も会話やカメラワークにドラマとしての気配りが行き届いていた。
posted by sumiitakao at 20:57| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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