2008年08月17日

メディアの利潤追求に歯止めを

 以下は「ジャーナリスト」 第598号(2008.1.25)に掲載されたリレー時評である

 アメリカにコーポレート・メディアという言い方がある。メディア自体が企業体として利潤追求、経営効率化を図り、巨大企業として君臨する方向を目指す。これに、政府との癒着や国益優先が付きまとう。その流れをさらに極めようとする動きが表面化した。
 ルーパート・マードック率いるメディア帝国、ニューズコーポレーションは、アメリカの名門経済紙ウオールストリート・ジャーナルを56億ドルで買収すると共に、10月15日から新しい24時間ニュース、Foxビジネスネットワークを開始した。湾岸戦争の報道で躍進したFoxニュースのビジネス版で「企業活動や利潤追求を悪とみない、プロアメリカ路線をとる」(ロジャー・アイリス社長の発言)と表明している。マードック自身も記者会見で「ビジネスフレンドリーで行く」と明言した。 
 「株が下がり、石油が上がり、プライムローンでゆれているアメリカでビジネスフレンドリーの経済ニュースが成立するのだろうか」(ニューヨークタイムス)とアメリカのメディアもきわめて懐疑的である。
日本はどうだろうか。
 NHKは一連の不祥事に端を発した受信料不払いで大きく揺れた。そして今ジャーナリズム性、公共性を拡大し、視聴者の信頼回復を図っているさなかである。ところがそれとは逆行する動きが顕著になっているのは憂慮すべき事態だ。
 昨年五月、NHK経営委員長に富士フィルムホールディング社長の古森重孝氏が選ばれ、十二月には次期会長にアサヒビール相談役の福地茂雄氏が決まった。NHKが財界コンビの手にゆだねられたのである。しかもこの二人、安倍元首相を囲む財界グループ、「四季の会」のメンバーだとNHKに詳しい松田浩氏(ジャーナリスト)は指摘している。まるでNHKのコーポレートメディア化であり、新自由主義化ではないか。
 NHK橋本会長は「視聴者第一主義と自主自立を貫き、編集権の独立を認識した運営を行ってほしい。視聴者に信頼される公共放送への改革を進めてほしい」(12月25日)と注文をつけた。私は信頼回復への道を歩もうとしている放送現場の気持ちがこめられていると思う。
 民放もまた企業としての巨大化の道を歩む。1月13日総務省は「持ち株会社化」によるキイ局、準キイ局の所有を12局まで認めることを決めた。地域メディアとしての独自性や番組の多様化は一体どこへいくのだろうか。ライブドアや楽天からの参入の動きに対し、フジテレビやTBSは公共性の論理を掲げて、利潤追求にはしる新興経営者たちを批判したものであった。「あるある大事典」への反省から叫ばれている社会的責任と「持ち株会社化」はどのように折り合いをつけるのであろうか。
 市民の側がメディアを監視し、奮闘する現場を支え、コーポレート化に歯止めを加える必要があると思う。(隅井孝雄)
posted by sumiitakao at 12:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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