2008年08月17日

リレー時評、ひも付き軍事アナリストの世論誘導

 隅井孝雄
 以下は2008年6月25日「ジャーナリスト」第603号に掲載されたリレー時評である

 イラク戦争に際してアメリカ国防総省が、軍出身の防衛・軍事専門家をテレビに送り込み、世論操作をしたのではないかという疑惑について、議会の監査機関GAO(アカウンタビリティーオフィス)や国防総省監査局がともに事実関係の調査に乗り出すなど、新たな広がりを見せている。
 この疑惑はニューヨークタイムスが4月20の紙面で報道して明るみに出た。それによると国防総省広報局はイラク戦争の前後、退役将校など軍出身の軍事アナリストにラムズフェルド長官らが出席する特別なブリーフィングの機会を設け、機密情報の閲覧も許可、時にはイラク国内やガンタナモ基地にも招待旅行をしたという。優遇された軍事アナリストの数は75人、その多くがネットワークテレビに解説者やゲストとして出演したという。
 5月24に付けのワシントンポストによると国防総省監察局はアナリストの多くが国防企業のコンサルタントでもあるため、特定の企業に有利に働いたかどうかを調査するということだ。また議会の監査機関GAOは政策のプロパガンダに政府の予算を支出してはならないとする倫理規定に国防総省が違反したかどうかを調査するという。
 さらに放送の監督機関FCCのケビン・マーティン委員長は、アナリストがホワイトハウスや軍事企業の特別な関係を明らかにしないで出演したのは“スポンサー表示義務”違反の疑いがあるとして調査する意向を示した。
 ニューヨークタイムスによると“ひも付き”軍事アナリストを最も歓迎したのはFoxニュースだが、結果としてCNNやNBCもコメントを鵜呑みにした場合がしばしばあったという。CBS、ABCは比較的公正、PBSは出演者にフリーフィング常連は一人もいなかったという。メディアに濃淡があるが、世論は当時「アメリカ軍ガンバレ」一色になって星条旗をうちふるったという事実は残る。
国防ファミリーを動員しての大がかりな世論誘導は驚きだが、それにもまして過去を徹底的に再検証する動きが強まっていることも驚きである。民主党が多数を握る議会がイラク戦争からの出口をさぐる動きの一環と見ることもできる。
 アメリカ大統領選もこれから本番、撤兵を主張する民主党オバマ候補と、あくまで駐留を継続しようという共和党マッケーン候補は大接戦が予想される。アメリカの世論振り子は一体どちらに振れるのだろうか。
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