2006年10月25日

ワールドスポーツ、熱狂の影で

 ワールドスポーツ、熱狂の影で
 隅井孝雄 5/26/2006

 今年3月21日放送されたWBCキューバ対日本の決勝戦は視聴率43.4%(関東地区)に達した。優勝の決まった瞬間午後2時58分の瞬間最高視聴率56%は、日本中が熱狂したことを如実に示している。正確な統計数字ではないが視聴率50%台超えるということはおよそ5千数百万人の日本人がWBCを見ていたことになる。
 スポーツの最大のワールドイベントはサッカーワールドカップとオリンピックだ。それに加えてワールド・ベースボール・クラシック(WBC)という国際スポーツもまたビッグイベントに仲間入りしたと言えよう。
 
 日韓W杯の二倍の放送権料、全試合BS放送するNHKの思惑
 この雑誌を読者が目にする頃、ジーコジャパンが一次リーグを勝ちぬいていれば、日本は再び熱狂の渦に巻き込まれる。2002年のワールドカップでの日本対ロシア戦(視聴率66%) の再来があるかもしれない。そうならないまでも、普段のサッカーファンの枠を大幅に超えた人々が深夜のワールドカップにチャンネルを合わせドイツからの衛星中継を熱心に見入っているに違いない。
 サッカーのテレビ視聴者数は巨大である。アメリカ大会は321億人、フランス大会は370億人、日韓大会は時差の影響で288億人にとどまったが、ドイツ大会は再び300億人を越えるものと見られる。
今回のサッカーワールドカップドイツ大会の中継のため日本が負担した放送権料は推定138億円である。2002年のワールドカップの際は衛星放送のスカパーが気前よく134億円出して全試合を衛星に乗せたという特殊事情があったが、NHK、民放の地上局の負担は66億円だった。その意味では今回のドイツ大会は、前回の二倍も払う。7時間の時差ですべての試合が真夜中か明け方というハンディがあるのにもかかわらずだ。
 高騰の原因は契約を結んだ頃、巨大化膨張路線を歩んでいた海老沢NHKにもある。NHKが気前よく53億円負担、地上波の20試合の放送に加えて衛星第一とハイビジョンで全試合を放送することを計画したからだ。
NHKのBS受信料は地上波契約より月間1000円ほど高い上に、目に付くディッシュアンテナを設置するので集金しやすい。つまりNHKにとってBS契約は金の卵ということになる。受信料の不払いによる減収に何とか歯止めを加えたいNHKがワールドカップにかける思いは切実である。スカパーは今回も全試合無料報道だが、NHKのおかげで影が薄い。

 日本国内の経済効果4700億円、FIFAは巨大なビジネスマシン
電通の試算によるとドイツ大会の日本国内の経済効果は4,760億円、ベスト4にまで進出すれば5460億円に跳ね上がるだろうとも計算している。
観戦の「弾丸ツアー」(日本対ブラジル)0泊2日は24万8,000円もするのに3,200件を超える申し込みが殺到するなどという現象がおきている。
しかしなんといっても日本国内で中心になるのは薄型大型テレビだ。ダブルベッドほどもある103インチも売り出された。大型デジタルを快適にみるためのソファーが売れ、照明、音響、壁の張替え、備え付けの棚など部屋のレイアウトを一新する人も多い。リフォームでざっと100万円から300万円かかる。テレビを買う人はデジタルDVDを一緒に購入する傾向もあり、メーカーにとってはこらえられないプリボーナス商戦となった。
イギリスの調査会社は今回のワールドカップでケイタイ関連にもたらす収益は全世界で63億5000万ドル(約7000億円)に上ると試算した。試合の模様をケイタイテレビで放送するなど新サービスに加え、ワールドカップに関連した着メロ、壁紙ダウンロードなどの収益性が高いという。この機会に新しい第三世代のケイタイへの買い替えも期待される。
開催国のドイツは今回のワールドカップを不況から抜け出すチャンスだとみている。ドイツ郵政公社の試算だと経済波及効果は100億ユーロ(約1兆4300億円)、経済活性化の切り札となる。
ヨーロッパ各地からの鉄道が乗り入れるベルリンではヨーロッパ最大の中央駅が完成した。開催期間中およそ300万人(日本からは2万人と推定)が海外から訪れる。
最大の収入源であるテレビ放映権は日韓大会をはるかに上回る15億フラン(10.2億ユーロ、約1400億円)になった。延べ視聴者300億人という世界最大のスポーツイベントがテレビによって全収入の60%以上を稼ぎ出す構造が定着したと見られる。ドイツ大会の公式スポンサーは15社。一社当たり3400万ユーロ(約50億円)前後の契約料は合わせて5億ユーロ、730億円になる。スポンサーへわたったチケットは50万枚。関係者や各国国内委員会にも配分されるので一般販売は全体の3分の1程度、111万2000枚しかない。

放送権でオリンピック牛耳る米、北京は巨大広告イベントのチャンス
2008年に北京オリンピックが開かれる。中国政府は民間企業と協力し、外貨の獲得という課題の実現を図っている。こうした中国政府の方針を背景に、広告産業が大きなチャンスとして沸いている。
天安門東西4キロには厳しい広告規制が敷かれている北京でも、オリンピック広告看板は別格のように立ち並び、バスにも車体の外といわず内といわず広告を満載した6000台が縦横に走っている。1700億ドルにものぼると言う開催費用が予算化されているが、テロ対策費が大幅に増えたため。組織委員会としては広告費で補うことがどうしても必要なのだ。
ソルトレークとアテネオリンピックに投じられた開催費用は37億ドル、そのうちの52%が放送権収入であり、32%が公式スポンサーによるものであった。特に目立つのはアメリカのテレビ局NBCが支出した放送権13億ドルだった。
北京の放送権もアメリカが8億9000万ドル出す。(日本1億8000万ドル、ヨーロッパ4億4300万ドル)。そしてNBCは早くも2010年バンクーバーと20012年ロンドンの放送権を一括して22億ドルで買った。NBCはオリンピックの競技日程をアメリカでの放送時間に合わせたものにするなど大きな力を持ちオリンピックを支配している。

オリンピックのテレビ視聴者は減少、インターネット伸びる。
トリノの冬のオリンピックではアメリカでは視聴率が激減した。フィギャースケートのホープ、ミッシェル・クワンの欠場、アルペンスキーのボード・ミラーの不振などあってヒーローが不在がたたりテレビの視聴者は一日平均2020万人に止まった。二年前のソルトレーク五輪が一日平均3190万人の視聴者だったことと比べると目減りは劇的である。史上最低の視聴率(平均12.2%)という惨めな記録だった。オリンピックでヒーローの存在は不可欠なのだ。
その一方オリンピックならではの不思議な現象もトリノには残った。アメリカのテレビ局NBCは、トリノ五輪の総経費の40%、6億ドル以上を負担したのだが、視聴率が悪くてもテレビCMの売れ行きが好調で9億ドルを稼ぎ出した。今後もテレビ局が札束に糸目をつけない状況は続く。
トリノ五輪はインターネット放送元年でもあった。アメリカNBC、イギリスBBCが開設した競技のストリーム映像サイトは始めて巨大なアクセスを実現しした。アメリカでは期間中実に3億6100万ページビュー、910万ビデオストリームを記録した。ウエッブ上で12万5000時間分のビデオが視聴されたというデーターもある。
世界は今ブロードバンドの拡大、インターネットと放送映像の融合の真っ只中にある。果たして今回のドイツワールドカップではどのようなインターネットによるアクセス記録が出るのであろうか。


1. W杯ドイツ大会スポンサー一覧
アディダス ドイツテレコム マスターカード
バドワイザー エミレイト航空 マクドナルド
アバイア(IP電話) 富士フィルム フィリップス
コカコーラ ジレット 東芝
コンチネンタル(自動車タイヤ) 現代自動車 YAHOO

2. FIFAの収支配分 2003-2006
収入 17億ユーロ(2440億円)
テレビ放送権料 60% e10.2億
スポンサー契約料 30% e5.1億
商品化権、入場料など10% e1.7億
支出
ワールドカップ経費 40% e6.8億
各種大会開催費 10% e1.7億
運営費      25% e4.25億
ゴールプロジェクト 25% e4.25億
注 ゴールプロジェクトとは後進国でのサッカー振興の援助プログラム。

3. 北京オリンピック国際スポンサーTOP
1.Coca Cola 清涼飲料
2.Atos Origin IT   
3.GE エネルギー、機械製造
4.Kodak カメラ、フィルム
5.Ienovo IT機器
6.Manylife 生命保険
7.McDonald’s ファーストフード
8. Omega 時計
9.Panasonic オーディオ/TV機器
10.Samsung ワイヤレスコミュニケーション
11Viza. クレジットカード

4. 北京オリンピック国内スポンサー
1.中国銀行
2.中国ネットワークコミュニケーション
3.中国石化 石油化学
4.中国移動通信 携帯電話
5.フォルクスワーゲン 自動車
6.アディダス スポーツ用品
7.エアーチャイナ 航空機







この記事は月刊「力の意思」2006年7月号に掲載された



5. オリンピックの収入2001-2004  IOCホームページより
項目 金額 比率
テレビ放送権 22億3600万ドル 52%
(アメリカのテレビ放送権) (13億4800万ドル) (33%)
スポンサー 13億3900万ドル 32%
ライセンシング 8100万ドル 2%
入場料収入 6億800万ドル 14%
合計 37億2400万ドル 100%


posted by sumiitakao at 14:15| Comment(0) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Weblog: 万国ニュース配信
Tracked: 2006-10-28 21:55
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