2006年10月25日

今度はNHKの分割、民営化が標的?       竹中放送、通信あり方懇最終報告書をめぐって

 0603 今度はNHKの分割、民営化が標的?
      竹中放送、通信あり方懇最終報告書をめぐって

竹中総務大臣の私的懇談会である「放送や通信のあり方に関する懇談会」が6月6日、最終報告書を発表した。
 金融改革、道路公団民営化、郵政民営化など一連の小泉改革の尖兵として次々に成功を勝ち得た竹中氏が、この次の標的を放送、通信の融合に絞って、ポスト小泉政策展開の第一歩として位置づけたものと見られる。
しかしNTTの持ち株会社廃止の検討に入ること、マスメディア集中排除原則を緩和することなどを決めた以外、”融合”の面では目新しいものはない。その代わり昨年来の一連の不祥事をきっかけにして、受信料不払いが急激に増加しているNHKについは、チャンスとばかりに抜本的な改革の方向を打ち出した。
今回の早急、唐突とも見えるNHK改革案は自民党の”抵抗”が予想されると同時に、国民、視聴者の支持を得ることが難しいと思われる。竹中総務大臣の思惑通り、強行突破によるNHKの抜本的”改革”が実現するだろうか。NHKの再編成は日本文化や言論、表現の自由にかかわる問題である。竹中総務相はソフトパワーを日本経済の新たな原動力としようというが、手に余り問題を抱え込むことになりはしないだろうか。

チャンネル削減? 見ていた人はどうなる

竹中懇談会のNHK改革の目玉はチャンネル数の削減である。
竹中懇談会の座長である松原聡氏はもともと「NHKの持っているチャンネルは公共放送としては多すぎる」という意見の持ち主であった。懇談会では現在3波ある衛星放送を1波にするほかラジオ第二放送とFM放送も削減の対象にしていたが、最終報告書ではラジオ第二の削減が見送られた。FM放送の中止は「多彩な音楽番組を提供するという公共放送の役割は終わった」という理由付けをしている。改革理由に公共性の大安売りという感が強い。
NHKは「放送が文化であるという視点が大切で、単純にチャンネルを削減して放送サービスの低下を招くことは反対だ。多様で良質な番組と社会生活に不可欠な情報と届けることにNHKの役割がある」という見解を発表して、正面から削減反対を打ち出した。
NHKの言い分に単純に同調するわけではないが、NHKのBS放送は最近人気が高まっていることも事実である。契約世帯は伸び続け1250万件に達している。地上波とは一味違った大型番組編成が好調で、NHKの財源としても無視できない存在となった。削減によってBSを愛好している視聴者をおきざりにしてしまうことになる。

 朝ドラ、紅白は公共性がない? 娯楽、芸能部門の分離

同じことは竹中懇談会が打ち出した「娯楽番組、ドラマなどNHKからの分離」についても言える。松原座長はかつて「紅白歌合戦には公共性はない」と発言している。しかし依然として日本国民の半数近くがこの番組を見ているという事実から目をそむけるわけにはいかないだろ。娯楽切り離し、別会社による放送は、NHKのスクランブル化、CM導入に道を開く。NHKを二つに割って、ひとつを有料放送にする、あるいは広告放送に変えるという、現行の放送秩序をひっくり返す大問題についての論議はまったくなされていない。大胆な発想だが無謀な改革手法と言えるのではないか。
竹中懇談会の報告書のうちチャンネル削減や制作分割案には自民党は反対しているため6月末に交わされた竹中懇談会と自民党の合意文では「チャンネルの有効活用のため詰めた検討を行う」などとうやむやのままであり、受信料の義務化の行く末も定まっていない。
竹中総務相は骨太方針の中にNHK改革を盛り込むというが、ポスト小泉の骨太改革は通信放送に関する限りどうやら骨抜きとなる雲行きである。

国際放送の強化? どうする財源
竹中懇談会に突然国際放送強化という項目が盛り込まれた。今年3月小泉首相が「日本がどういう国かを発信することは重要だ」と発言して、竹中総務相に海外向け放送の強化を指示したことからにわか仕立てで始まったものだ。
国際放送であるラジオジャパンの開始は1935年。第二次大戦中は対米謀略電波として”活躍”した。現在は22の言語で放送、貴重な国際理解のツールになっている。
テレビは1995年からニュースを主体とした「NHKワールド」が世界各地で衛星から流れるようになり、ドラマなど一般番組を含めた「NHKプレミア」という有料衛星放送も加わった。海外の一流ホテルで視聴できるほか、各地の衛星やケーブルでも見られる。現状では海外在留の日本人や旅行者が対象である。しかし大型ディッシュや衛星チューナの設置が必要であるため、視聴者は限られる。CNNやBBCワールドのように世界へ向けての情報発信として国際的な認知を得るにはいたっていない。
NHKはワールドTVに28億円の予算を投じているが、BBCワールドはその3倍以上の95億円を使っている。国際放送には自民党も大乗り気で、国費投入もOK、子会社を設立し、民間の出資を積極的にうけいれるよう、というのが竹中懇と自民党の合意文に書き込まれた。
国際的な情報発信はCNNが1980年代に先鞭をつけた。湾岸戦争の際はCNNがバグダッドから伝える生のニュースに世界の耳目が集まった。遅れをとったBBCは1991年にBBCワールドを開始、その後テレビによる国際放送のマーケットには、中東のアルジャジーラ、ドイツのジャーマンテレビ、韓国のアリランテレビ、中国のCCTVが参入、さらに今年末からフランス情報チャンネルが加わる。
火花を散らしている国際的な情報発信の中ですっかり孤立した感のある日本。私もこの点では小泉首相の提案に賛成したい。しかし受信料の投入はどこまで許されるのか、国の財源を使うことによってひも付きにならないか、民間の資金は果たして集まるのか・・・。財源の手当てはさだかではない。丸ごと国がまかなう中国は別として、公共メディアでありながら有料放送システムや広告を併用するBBCなどの国際放送のビジネスモデルはさまざまである。
日本政府の代弁者と見られるような国際放送ではなく、公正な内容を持ち、国際理解を広げるような情報発信が実現することを期待したい。NHKがその役割を担って世界の信頼を獲得することになるかどうかが問われるだろう。
 
この記事は月刊「力の意思」2006年8月号日本の針路のコラムとして掲載された
posted by sumiitakao at 14:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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