2007年01月31日

 日本の国際放送を考える その1  突如浮上の国際放送強化、その実状は?

 これは2006年12月にみずのわ出版から発売された「ジャーナリズムのいま」の抜粋である

 0701 日本の国際放送を考える その1

 突如浮上の国際放送強化、その実状は?
 国際放送を充実強化すべきだという意見が、一連のNHK改革論議の途中突然浮上した。小泉首相は2006年3月1日、竹中総務大臣を呼んで「日本がどういう国なのか発信することは重要だ」と国際放送の強化を指摘、これに歩調をあわせるように麻生外相もアジア版CNNを日本から発信する必要があると発言している。竹中在り方懇談会は3月9日の会合で早速国際放送を議題にした。
東京新聞小田克也記者の証言によれば「首相の靖国参拝問題で悪化する日中関係に関し、自民党内では中国側の、日本の国民感情に対する理解が不十分である、として中国はじめアジア諸国に対する日本からの情報発信が手薄と感じていた。首相の国際放送強化発言も、その延長線上から出たものだ」(フジテレビ、AURA 178号)という。
 自民党内にはそのためなら税金を投入しても良いし、広告費の導入も認めても良いのではないかという意見さえ出ている。NHKを国家戦略に活用する考えは、推進会議や竹中在り方懇談会の論議にも強く反映して、実現の可能性に向かって一歩踏み出すこととなった。
 受信料不払いの増加でNHKの2006年の予算は2004年度に比べ5000億円の減収であることから、制作費の削減、賃金のカットなどが行われ、将来的にはチャンネルの削減、関連子会社の改廃など、2年前までの拡大路線とは打って変わった縮小路線を歩んでいるNHKである。ところがそこへ国際放送の強化拡大が飛び出したのは政治的思惑の結果だと見るしかない。国際放送はNHKに引き続きやらせるが財源はCMの導入と国費の導入だと言うのが竹中在り方懇談会の結論である。
 国際放送であるラジオジャパンは1935年に開始された。日本の対外宣伝という役割が担わされ、第二次大戦中は対米謀略電波として”活躍”し「東京ローズ」を生んだ。戦後は国際理解の重要なツールに生まれ変わった。現在22の言語で放送、世界各地に熱心な日本ファン、日本語ファンを生んでいる。日本にとって実に貴重な国際メディアだ。
 テレビは1995年からニュースを主体とした「NHKワールド」が放送されるようになり、さらにドラマなどのNHKの一般番組や一部民放の人気番組も取り入れた「ワールドプレミア」という海外向け有料衛星放送が加わった。世界各地向けの衛星放送を経由してアメリカ、アジア、ヨーロッパなど180の国と地域に送信している。「NHKワールド」はBS1のニュース、情報番組が主体で、一部の番組が英語と日本語の二ヶ国語放送になっている。受信可能世帯は7,200万世帯あるというが、2.5-6メートルの大型ディッシュアンテナと衛星デジタル・チューナーを取り付けなければ見られないので実際の視聴者はごくわずかである。実態は世界へ向けての情報発信というよりは在留邦人、日本人旅行者に対して海外でもNHKニュースが見られます、といった程度のサービスである。スクランブルはかかっていない。
 もうひとつの国際放送「ワールドプレミア」は「NHKワールド」と同じように大きなディッシュと衛星デジタル・チューナーが必要だが、こちらはスクランブルがかかっていて、月間3000円の有料放送である。海外のホテルなどでNHKが見られるのはほとんどこの「NHKプレミア」だ。NHKは100カ国150地域でプレミアムの契約者が1200万人いるとしている。
 しかし実際には短波放送による「ラジオ日本」のほうが日本の情報文化の国際発信としての実態を備えているといえよう。ラジオ放送には国から22億円の交付金が出ている。海外放送全体のNHK予算は118億5000万円(2006年度)である。

 世界各国のテレビ国際発信花盛り
 国際的な情報発信は1980年代にCNNが先鞭をつけた。湾岸戦争の際はCNNだけが戦時下のバグダッドから伝える生のニュースに世界の耳目が集まった。CNNはスタート当初から衛星放送による家庭直結配信であった強みで影響を世界へ広げた。
 遅れをとったBBCは1991年、BBCワールドを開始して信頼できる客観的なニュースソースとしての声望を高めた。BBCは公共放送であるが、受信料を使わず広告放送でまかなうBBCワールドという別組織でテレビ国際放送を行っている。これに次ぐ国際情報発信源はヨーロッパではドイツの国際放送ドイチェベレ(ドイツの波)である。公共企業体だが財源は100%国庫から支出されている。ドイツはこのほか有料で一般番組を流すジャーマンTVがあり、世界各地で視聴者を増やしている。
 最近ではカタールに足場を置く中東の衛星ニュースアルジャジーラが9.11、イラク戦争を通じて瞬く間に世界に影響力を広げた。設立当初カタール政府の援助があったが、今は各国メディアとの契約料と広告収入で自立している。
 中国はこのところ海外への情報発信を強め、CCTV(中国中央テレビ)がすべて英語の24時間ニュースを開始、影響力を強めている。フランスではシラク大統領の肝いりで2006年12月からフランス版CNNといわれる国際テレビCFII(フランス国際情報チャンネル)の放送を開始する。いまや衛星放送による国際情報競争は熾烈を極めることとなった。
 対外的な政策宣伝のために政府が直接運営する放送としてはアメリカVOA、朝鮮の声、ロシアの声などがあるがこうした局は情報機関と同一視されることが多い。アメリカは2004年2月アルジャジーラに対抗するために「アルフッラ(自由)」と名乗るアラビア語による24時間衛星ニュースチャンネルを開設した。スタジオはホワイトハウスにほど近いバージニア州にあり、中東全域に向けて衛星放送しているがアメリカのプロパガンダと見られ、信頼度は低い。
 自民党は国際放送をNHKから切り離し、民放にも出資を求めた国策機構を作りニュースや番組を発信する構想を検討しているが、国家の意向に沿った国際放送では果たしてか公正な国際メディアになりうるのかどうか疑問がある。
 自民党はラジオによる国際放送の廃止を考えているようだがこれは大きな間違いだと私は思う。アフリカ、中東、東アジア、中南米などの第三世界はいうに及ばず、アメリカ、ヨーロッパでもラジオは有用なコミュニケーション手段として多くの市民をひきつけている。短波放送、さらには衛星デジタルラジオ放送の国際的役割は大きい。ラジオを過小評価してはならないのではないか。
 日本政府の代弁者と見られるような国際放送ではなく、公正な内容を持ち、国際理解を広げるような情報発信が実現することを期待したい。NHKがその役割を担って世界の信頼を獲得することになるかどうかが問われるだろう。
 国際放送だから海外ということだけではない。日本国内にはもともと非常に大きな韓国・朝鮮のコミュニティーが存在しているのに加え、最近では移民労働者の増大などによる国際社会の拡大が進んでいる。それらの在留非日本人に対して日本と世界の情報を送り届けるという役割もある。
どのような国際放送を構築するのか、NHKがその責任を引き続き背負うのか、あるいはCNNのような国際的衛星ニュースビジネスが誕生するのか、これからの論議に待つ必要がある。

posted by sumiitakao at 22:47| Comment(0) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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