以下は2007年9月25日、「ジャーナリスト」594号のリレー時評に掲載されたものの再録である。
8月28日関西テレビで「コーポレートメディア、放送は誰のものか」という番組が放送された。
番組は冒頭で「視聴率にとらわれ実は視聴者のほうを向いていなかったのではないか」と反省の弁を述べる関西テレビの当時の千草社長、検証委員会の外部委員吉岡忍氏などを囲んでの現場スタッフの勉強会などを紹介したあと、このドキュメンタリーを作った報道局の迫川緑ディレクターはアメリカに飛ぶ。
アメリカでは大手メディアが「コーポレートメディア(企業に支配されたメディア)」と批判されることが多いという。一方、普通の市民にカメラを渡し発信するチャンスを作っている活動も盛んだ。「会社組織で企業の都合が優先するというジャーナリズムの中で働くものとして放送は誰のものかという原点にたって考えようと思った」というナレーションが入る。
迫川DはテレビのウオッチドッグであるNPO「フェアー」、市民の発信の拠点となっているビデオジャーナリストグループDCTV、パフリックアクセスのセンターであるマンハッタンネイバーフッドネットワークなどを訪ねる。また独立メディアでありながら大きな影響力を持ち始めたニュース番組「デモクラシーナウ」も取材した。
ネットワークへのアプローチは難しかったという。現場がOKしても、正式な話になると断ってくる。かろうじてCBSのドキュメンタリー部門の責任者が取材に応じ「編集は独立しているが視聴率や広告の圧倒的なプレシャーがある」というコメントを取った。状況は共通だなというのが迫川Dの感想である。
日本に戻って、カメラを回して喫茶店などで定期上映している大阪の市民グループ「カフェてれれ」など日本の現状を取材して番組は終わる。
「あるある大事件」後、関西テレビでは倫理綱領や番組、取材のガイドラインを作り直し、番組委託契約の見直しを行っている。またメディアリテラシーイベントの開催(6月16日)などかなり積極的な取り組みを展開している。会社のシステム上の対策は進んでいるのだが、放送現場はまだまだ沈滞したムードが払拭されていないようだ。8月27日に番組活性化委員会が旗揚げしたと聞いたが今のところ目立った変化はないという。
日本の放送番組、放送産業の問題点の検証という意味で、関西テレビのみならず民放各局が、自らを問い直す番組を制作し、視聴者に問いかけることは、日本の放送の再生のために重要ではないか。是非とも続編で、日本のコーポレートメディアを徹底分析するなど企画を継続することを求めたい。