2008年01月07日

テレビは国境を越える イラク中東の場合

シンポジウム テレビは国境を越える イラク中東の場合
隅井孝雄
 以下は2007年10月13日、高知大学で開催された放送芸術学会大6回全国大会におけるパネル討論での隅井の発言要旨である。

1. イラクではイラク戦争当時アメリカ軍によって国営放送は完全に破壊された。戦後米軍を中心にして放送が再開されたが、ニュース報道では宗派対立の武器としてのテレビメディアが次々に誕生した。しかし市民の文化に対する渇望を受けとめる形で商業放送も相次いで開局、ドラマや社会番組を放送し始めた。フセイン体制で禁止されていた衛星放送による視聴も一般的になった。
2. 外出禁止令の元で、情報にも娯楽にも乏しい生活を強いられたイラク市民は商業放送の娯楽番組、ドラマ、コメディーを熱心に視聴した。代表的なもの、「イラクスター」と「シャイマの住宅リフォーム」などである。
3. イラク、中東には商業放送でのコマーシャル活動を求めて英米の広告メディアが進出している。活発な広告、PR活動を展開している欧米系企業はBBDO、 Saachi & Saachi 、Gray、Starcom, World Wideなどである。
4. 商業テレビでは生活用品の宣伝がしきりに行われ好評を博している。広告活動の一環として英米の人気番組のコンセプトもイラク、中東一帯に進出し、ビジネスにもなっている。コンセプトビジネスはほとんど欧米の広告PR会社が仕切っている。「アラブスター」はその一環。Foxアメリカンアイドル、イギリスITVポップアイドルのコンセプト買いも広告プロダクションによる。
5. アフガニスタンでも同じようなメディア状況が広がり、人々はコマーシャルつきの商業放送で、娯楽番組を楽しんでいる。とりわけ民放ToloTVによる「アフガニスタンスター」は人気がある。
6. 中東では衛星放送(ナイルサット、アラブサット)によって中東全域をカバーするテレビ放送が極めて活発である。「アフガニスタンスター」も「イラクスター」も最終的にはベイルートで開催されるアラブスターで決勝を争う。
7. 中東で衛星視聴できる番組はおよそ1000チャンネルに上る。全アラブ社会が視聴する共通番組も多い。また世界の衛星放送もくまなく視聴できる。アラビア語の冬ソナもある。アメリカ、フランス、イギリスは中東向けニュース放送に熱心である。ビルの屋上にパラボラアンテナが林立する様子は、アラブ世界のほかにはない。
8. カタールのアルジャジーラは市民権を獲得し、中東におけるテレビ報道のモデルとなった。アラブの衛星文化の中心地はドーハ、アブダビ、カイロ、ベイルートなどである。これらの地域には大規模なメディアセンターがある。
9. このような状況のもと、アラブ世界は急速に国際化、近代化している。西欧風の民主主義文化への理解も進み、グローバルな文化が育っている。9.11に生まれた傷を修復し、中東が民主化される日がいつか来るに違いない。
posted by sumiitakao at 16:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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